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学校長 菅原出の「飛耳長目」 - 2022年12月17日

学校長 飛耳長目 Dec 17, 2022
菅原出の連載コラム

  こんにちは!オンラインアカデミーOASIS学校長の菅原出です。

先週も世界では大きなイベントがありました。12月79日の3日間、中国の習近平国家主席がサウジアラビアを訪問しました。習国家主席はサウジアラビア国王との首脳会談の他、リヤドで開催された第1回「中国・アラブ首脳会議」や「中国・GCC首脳会議」に出席しました。

今年7月にバイデン米大統領がサウジを訪問した時とは対照的な、ド派手な歓迎式典が開催され、習近平氏は大歓待され、中国とアラブの新時代を感じさせる場面でした。

ただ、中東における米軍のプレゼンスは引き続き圧倒的であり、中国は中東諸国に軍隊を駐留させるわけでもなく、米国のように大規模に兵器を売却するわけではありませんから、中東における基本的な戦略構図は変わらない、と見る識者もいます。

私は、中東における米中の影響力をめぐる闘争が新時代に入ったと考えています。米国と中国の中東へのアプローチの仕方はまったく異なり、どちらがよりアラブ諸国から歓迎されているか、を考えれば中国の方だな、と思うからです。

米国は、サウジアラビアのようなアラブ諸国に「安全保障を提供する」というメリットを与えてきました。これは、アラブ諸国にとっての脅威が大きい時には当然ありがたく感じられたはずです。冷戦時代ですとソ連という脅威がありましたし、冷戦後もサダム・フセインのようなイラクの独裁者、アルカイダのようなテロ組織がいて、フセインがクウェートを侵攻した時には米国が軍事介入してクウェートを解放し、サウジまでイラクの脅威が及ぶことを防ぎました。まさに「安全保障の提供者」としての実力を発揮した形でした。

ところが時代は変わり、今はサウジのような湾岸アラブの国々には、イランくらいしか大きな脅威はありません。しかも、米国はイランの脅威に制裁をかけるくらいしか出来ておらず、「安全保障の提供者」としての仕事をしていない、とサウジなどは考えています。それどころか、イエメン戦争や人権問題でサウジに圧力をかけ、サウジが望む兵器も売ってくれません。

一方の中国は、アラブ諸国の将来の発展のために技術や資金を提供する「経済発展のパートナー」として中東に進出しています。しかも、サウジにとって最大の脅威であるイランに対しても、中国は抑えが効きます。米国の制裁下にあるイランの原油を買ってイランを支えたのは中国です。米国に頼るよりは、中国の影響力を使った方がイランの暴挙を抑えられる、とアラブ勢が考えている可能性は高いと思います。

今回の習近平氏のサウジ訪問で、サウジは、原子力や次世代通信など、米国が警戒するセンシティブな分野での対中協力を強く打ち出しました。米国があれだけ「やめろ」というファーウェイとも契約を結び、将来の経済発展に不可欠な技術とサイバー、デジタル・トランスフォーメーションを中国と組んで進めていく姿勢を明確にしたのです。

だから、中東をめぐる米中覇権闘争は新たな段階に突入した、と私は考えています。

これを受けて、今後米国がどんな対応をしてくるのか、目が離せません。今後、中東をめぐる大国間パワーゲームを理解するために役立つ動画も作っていきますので、楽しみにしていてください。

12月11日には奥山真司先生の「地政学で読む国際情勢③近代地政学への道:独・米」が公開されています。是非ご視聴ください。

 

世界は今、100年に一度の大きな変動期を迎えています。歴史や地政学をはじめ、国際政治や安全保障を基本から学ぶことが、今こそ必要とされています。

 

是非一緒に学んでいきましょう!

 

菅原 出

OASIS学校長(President