OASIS学校長 菅原出の「飛耳長目」 - 2023年2月8日
Feb 08, 2023こんにちは!オンラインアカデミーOASIS学校長の菅原出です。
米領空に中国の偵察用気球が侵入した問題で、米中間の緊張が高まっています。
この気球は1月28日に米アラスカ州アリューシャン列島周辺に米国が設定している防空識別圏に入った後、同州北部上空を飛行して30日にはカナダ上空に移動。その後再び31日に米アイダホ州北部から米領空に侵入し、2月2日にはモンタナ州上空を飛行。同州のマルムストロム米空軍基地は核ミサイルが配備されている機密性の高い場所であるため、米政府の警戒感は強まったようです。
バイデン大統領は2月1日時点で国防総省に気球の撃墜を指示していましたが、米軍は4日になって、この気球が東海岸のサウスカロライナ州沖の上空に入ったところで撃墜した、と発表しました。この直前の3日に米国務省は、予定されていたブリンケン国務長官の訪中を無期限に「延期」することも発表していました。
その後の報道で、似たような気球の領空侵犯は過去に少なくとも4回確認されており、3回はトランプ前政権時、一度はバイデン政権になってからだとのことでした。米北方軍のグレン・バンハーク司令官は2月6日、米軍がこうした過去の気球の飛来を検知できなかったことを認め、後になって情報機関からそうした事実を知らされていたこと、米軍の「状況把握に空白があったこと」を認めています。
そのうえで、今回撃墜した気球に搭載されていた機器を回収・分析することで中国の偵察用気球の能力を調べ、対抗策を練ると述べています。
中国がこうした偵察用気球を飛ばしている狙いについては専門家でも意見が分かれていますが、人民解放軍は数年前から、こうした偵察用気球を世界中に飛ばして各国の軍事施設などの情報を収集していたようです。
宇宙に偵察衛星を打ち上げているのだから、今さら気球など不要ではないか、と考えがちですが、ゆっくりと上空を飛行する気球からは、衛星では収集できない細かな情報がとれる可能性があり侮れないでしょう。中国は、ハイテクとローテクを組み合わせて様々な情報を収集しているのかもしれません。
いずれにしても、この「気球騒動」で米中間の「対話路線」は当面脱線です。日本経済新聞ワシントン支局長の大越匡洋氏は、「米中は対立を深めながらも、互いの誤解や誤読による衝突を避けるため、2023年を両国間の対話の枠組みを確認する年と位置づけていた」と書いています。
なぜなら「24年には台湾総統選や米大統領選を控え、両国とも対立を管理することがより難しくなると見越していたから」だと言います。つまり、24年は“やばい年”になるので、今年中に対話のチャンネルを整備して「対話の枠組みを確認」したい、とバイデン政権は考えていたということになります。
しかし、ブリンケン国務長官の訪中が無期限に延期され、「互いの誤解や誤読による衝突を避ける」チャンネルが機能しないまま、米中対立は「管理不能」で危険な領域に突入していきそうな勢いです。
2月12日のOASISシンポジウム「米国VS中露」では、今後の米中関係の見通しについても、白熱した議論が展開されるものと思います。是非お楽しみに!
また、2月2日には折木良一先生の「危機管理とリーダーシップ」の第三弾が公開されています。是非ご視聴ください。
世界は今、100年に一度の大きな変動期を迎えています。歴史や地政学をはじめ、国際政治や安全保障を基本から学ぶことが、今こそ必要とされています。
是非一緒に学んでいきましょう!
菅原 出
OASIS学校長(President)