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OASIS学校長 菅原出の「飛耳長目」 - 2023年3月31日

学校長 飛耳長目 Mar 31, 2023
連載コラム|菅原出飛耳長目

 こんにちは!オンラインアカデミーOASIS学校長の菅原出です。

 

前回の「飛耳長目」でサウジアラビアとイランの国交回復についてお伝えしましたが、その後サウジアラビアもイランも、北京で発表された合意に沿って早速行動をとりはじめています。

 

サウジ・イラン国交正常化に向けた具体的協議開始

 

3月19日、サウジアラビアのサルマン国王がイランのライシ大統領にあてた書簡で、同大統領をサウジに招待したことがイラン・メディアで伝えられました。ライシ大統領はこの招待を歓迎し、受諾する意向を示したことも確認されています。サルマン国王は書簡で、外交関係正常化の合意を歓迎し経済協力などを呼びかけ、ライシ大統領は「協力を広げる準備は整っている」と強調したそうです。

 

3月15日にはサウジのアル・ジャダーン財務相が、「サウジによるイランへの投資が非常に迅速に実行に移される」「イランにはサウジの投資機会がたくさんある」とロイター通信に語ったことから、サウジによるイラン投資が始まる、としてイランでは期待が高まっているようです。

 

3月23日にはサウジのファイサル外相とイランのアブドラヒアン外相が電話で会談し、「可能な限り早期に大使館や領事館を再開する準備を開始すること」で合意したと伝えられました。

 

サウジ・イランが関係改善に動き出したことにより、両国間の代理戦争が展開されていたイエメンやシリアの紛争も沈静化の方向に動き始めました。イエメンではイランがフーシ派への武器支援をやめることに合意したことから、国連仲介の和平交渉が再開される見込みです。

 

また、サウジとシリアも外交関係正常化に向けて両国政府高官による協議が始まっていることが明らかにされました。

 

シリアで米軍と親イラン派武装勢力が衝突

 

この新しい潮流に明らかに取り残されているのが米国です。米国務省は、「シリアのアサド大統領は人権侵害を繰り返す非道な独裁者だ」として同政権を認めないよう呼び掛けていますが、この流れを止められそうにありません。

 

この流れを逆転させるには、“イランが脅威である”ということを改めてアラブ諸国に認識させ、その“脅威”に対抗する力強い味方として米国の存在を売り込むしかないのではないか、と筆者は考えてきました。

 

3月24日、米軍がシリア東部の親イラン派武装勢力の拠点に空爆を行ったとの発表がなされました。前日23日にシリア北東部の米軍が駐留する基地に無人機攻撃があり、米国人の民間人1人が死亡し、米兵5名が負傷したことから、その報復攻撃を行ったようです。

 

米軍はすぐさま戦闘機F-15でイラン革命防衛隊が支援する民兵勢力の武器庫2カ所を空爆し、計19名を殺害したと報じられました。これに対して親イラン派武装勢力も報復のロケット弾を米軍基地に撃ち込み、米兵にまた負傷者が出た模様です。

 

バイデン米大統領は24日、「イランとの衝突は望まないが、国民を守るため強力な対応を取る用意がある」と述べて、イランに警告を発しました。

 

バイデン政権は、中国主導のサウジ・イラン関係正常化を皮切りに、米国の利益を無視してイランへの投資やシリア復興を勝手に進められては困りますので、イランの脅威を煽り、イランとの対立を激化させてくる可能性があります。

 

当面、中東からは目が離せなくなりました。

 

4月7日(金)19302100に「サウジ・イラン国交回復『中国仲介』の衝撃と変わる中東秩序」と題して第2回ライブ講義を開催し、最近の中東情勢について詳しく解説する予定です。奮ってご参加ください。

 

「世界は今、100年に一度の大きな変動期を迎えています。今こそ歴史や地政学をはじめ、国際政治や安全保障を基本から学ぶことが必要とされています。

 

是非一緒に学んでいきましょう!

 

菅原 出

OASIS学校長(President