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中国共産党第20回全国代表大会のポイント

ワンポイント解説 中国 Oct 26, 2022
中国党大会

2022年10月16日から22日にかけて、中華人民共和国(中国)では、5年に1度の党大会となる中国共産党第20回全国代表大会(20大)が開催された。また、党大会閉幕後の23日には、中国共産党第20期中央委員会第1回会議(一中全会)が行なわれ、政治局常務委員や政治局員などが決定した。

人事をめぐって党内部での暗闘が続いていたと見られるが、蓋を開けると習近平「1強」という結果であった。派閥の均衡を打ち破り、習近平派一色となった人事は、習近平の下に党や国家を凝集、団結させる布陣となっているだけでなく、習近平しか成し遂げられないであろう中台統一を意識した布陣であると見ることもできよう。

20大で改正された党規約では、全文はまだ公表されていないが、「『台湾独立』に断固として反対し、それを食い止め」ることや、習への忠誠表明を意味するスローガン「二つの確立」(習の党中央・全党の核心的地位と習の思想の指導的地位の確立)などが新たに盛り込まれたという。

また、政治局常務委員や中央軍事委員会副主席に後継候補が選ばれなかったことから、4期目も視野に入る。20大では、習近平(69歳)のほか、張又侠(72歳)と王毅(68歳)が「七上八下」の慣例を打破してそれぞれ中央政治局委員と中央委員会委員に留まった。これまでの習近平政権でも、2人の軍事委員会副主席のうち1人を交代させ、また中央外事工作委員会弁公室主任と外交部長をスライドさせる人事が行われており、軍事と外交における継続性重視の姿勢を反映していると見られる。

このことから、今後、3期目の習近平政権においても、対外強硬姿勢やインテリジェント化した戦闘能力の強化、ハイブリッド戦争に向けた「軍事闘争準備」は継続、一層強化されるだろう。

なお、党大会初日の全体会議で行われた20大の活動報告では、19大報告と比較して、「新時代」、「人民」、「安全」、「闘争」、「科技」の使用頻度が増加、一方で、「創新」、「経済」、「改革」、「市場」といったキーワードが減少した。これは、「新時代」すなわち習近平時代が強調され、また「発展と安全を統一的に考慮し」つつ、習近平が掲げる「総体国家安全観」やゼロコロナ政策による「人民の生命安全」が経済よりも優先されることを意味している。

今後、「ゼロコロナ」政策が継続されるとともに、経済社会に対する統制を強めることで、生産と消費の両面が縮小し、中国の世界的な購買力、すなわち輸出入が低下して、中国発の世界同時恐慌のリスクが高まる可能性があることにも留意する必要があるだろう。

 

京都先端科学大学

准教授 土屋貴裕